エシカルファッション、サステナブルファッションという言葉が浸透してきていますが、ファー(毛皮)にはどんなイメージがありますか?
最近ではフェイクファーをエコファーとも呼んで、使うとエシカルだと思われがちですが、本当のところはどうなんでしょうか。
ファーの歴史
ここでまずはファー(毛皮)の歴史に目を向けてみましょう。
ファーの歴史は古く、現在見つかっている世界最古の衣服も、ヨーロッパ・アルプスで発見された約5000年前のものです。毛皮の服に、草で編んだマント、底が革でできた靴を身につけていたそうです。
以下は、参考サイトから引用させていただきました。
ヒトが毛皮を衣類としてはおるようになったのは、旧石器時代からだと考えられています。 狩猟を行い食料にしていた動物からはぎとった毛皮そのものを着用し、防寒具として用いていました。 現代のようにさまざまな繊維や紡績の技術がない時代。 自然環境で採取できるものの中で毛皮ほど長持ちする衣類はありません。
そして野生動物の狩猟による「毛皮」は、人類の家畜産業のはじまりによって単なる衣服の枠を超え、装飾性の強いアイテムとして展開されてゆくこととなります。西欧では14〜15世紀に毛皮消費量が大きく伸びたと言われていて、その多種多様な色彩と模様、各種動物の毛皮の美しさや手触りは人々を魅了し、纏うことで自己アピールや権威を象徴する嗜好性を帯び始めました。
日本でも毛皮の衣類が爆発的にヒットする時代が訪れます。ファーの衣類に対する新しい流行が訪れたのはバブル期の1980年代。当時はこぞって毛皮のコートを着用する女性たちが続出しました。
そして特に流行したのがミンクの毛皮のコートと言われています。
このブームが毛皮を新たにファッションとして取り入れる潮流を生むことになりました。本来、裸同然だった人類が身体を守るため、権威を表現するために着用していた毛皮の衣服が民間のファッションへと変化していくのです。
20世紀以降、狩猟による毛皮の採取が減少すると、飼育場で生産されるようになりました。飼育が簡単なウサギとキツネの養殖が始まり、少し遅れてミンクの養殖が始まります。
現在、全リアルファーのうち85%が養殖されたものと発表されています。ヨーロッパと北アメリカが最大の供給者で、日本はフィンランドから未加工の毛皮を最も多く輸入しています。

©SPL Lascaux International Exhibition 

リアルファーのメリットとデメリット
では、なぜリアルファーが問題視されるようになったのでしょうか。
華やかなファッションの裏側には、長年消費者が知ることのなかった事実が横たわっていて、近年徐々にそうした情報が明るみになってきたんですね。問題となっているのは主に以下の3つです。
- 動物愛護の観点からの問題
- 倫理的(エシカル)な問題
- 環境汚染の問題
一方で、悪者扱いされているリアルファーにもメリットはあります。
リアルファー農場も動物の命をファーのためだけに使うということは考えていません。
皮を剥いだあとの肉は動物園や漁業の餌にし、脂肪部分は工業用のオイルにしています。特に、オーガニック農法の飼料としても活用されるものも多いのです(アメリカやカナダのファー団体の発表)。
では、メリットとデメリットを見ていきましょう。
リアルファーのメリット>>
1.長く使える
祖母の代から3世代にわたって使うということも珍しくない。多少使えないところが出てきても、リメイクして使って楽しむこともできる。一つのアイテムを長く大切に使う、というのもエシカルである一つの重要な要素だ。
2.生分解性がある
天然素材であるため、土に埋めても地球に還る素材である。
リアルファーのデメリット>>
1.動物愛護の観点から見ると倫理的であるとは言えない
動物の毛を生きたまま剝ぎ取ることが多い。日本にも入ってくる養殖ファーの問題点としては、「毛皮のために生まれ、育てられ、死んでいく」という点だ。動物にとって生きる権利が与えられていない。日本では毛皮を着こまないと凍死するという天候はないが、それでも、リアルファーを求めるということは、動物の命を人間が一方的に掌握し、それを着ていると言うこともできる。
2.種の絶滅を招いている
乱獲による種の絶滅が起きている。毛皮のために消えていった動物は、ブルーバック、シマワラビー、オオウミガラスなど多くいる。
3.飼育動物の虐待
様々な規定・検査を守り運営している農場もあれば、そうではない農場もある。多く報道されている中国での虐待以外にも、例えば2009年、ロイター通信によると、ノルウェーでも動物愛護団体の調査の結果、一部の飼育場で脚や耳をちぎり取られた動物が放置されるといった行為があったと発表された。ノルウェーにある330の飼育場のうち、45のフォックスとミンクの飼育場で虐待行為が確認された。
4.環境汚染
動物の命に関する観点以外にも、有害な薬物の投与や、遺体を放置することで富栄養化による環境汚染も問題として挙げられる。さらに、飼育に必要な餌のエネルギーコストが莫大という点もある。
最近発表されたオランダの研究所の発表によると、温室効果ガスの排出量に換算すると、リアルファーはフェイクファーに比べて4〜5倍もの環境負荷がかかっていると分かった。これはほとんどが餌にかかるエネルギーコストだという。
フェイクファーのメリットとデメリット
次に、フェイクファーのメリットとデメリットも見ていきたいと思います。
フェイクファーのメリット>>
1.生態系を守る
フェイクファーは動物を殺さないので自然の生態系を守ることになる。
フェイクファーのデメリット>>
1.環境汚染
フェイクファーは主に石油系のアクリル繊維(またはポリエステル繊維)からできている。染料も石油系だ。
そのため、製造することによって環境汚染が進む。「動物の命は守っても、自然が失われては元も子もない」ということになる。
特に、排水の処理に最大のコストがかかっている。最大の合繊輸出国である中国は2011年からのグリーンピースによる調査で、繊維工場の周辺で有害物質の検出が確認された。発がん性のあるアゾ系やホルモンに悪影響をおよぼす界面活性剤の一種、ノニルフェノールエトキシレートなどだ。
日本のフェイクファーは品質も世界的にハイレベルですが、フェイクファーを作っている側からすると、そもそも環境という観点から作ってないというところもあります。フェイクファーをエコファーと呼ぶこともありますが、「そっちのほうが響きがいいから。全然大差はない。」という意見もあります。
あなたの結論は?
ここまでファーについて見てきましたが、あなたにとって一番良いと思える選択は何ですか?
人間の営みは全て環境に影響を及ぼしていると考えると、どの方法なら最も影響が少ないのか、何を選べばストレスなく環境負荷を選らすことに貢献できるのかを、自分なりに考察して結論を出すしかないですよね。
あなたの結論が、地球の未来を守るものでありますように。

